[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「ちーちゃんの髪いつもさらさらだよねーいいなー」
「えー、そうでもでもないって~」
小さいころからずーっと伸ばしているチカの髪は、小学5年生になった今では
背中の真ん中あたりでサラサラなびいている。
「ちーちゃんロング似合うしうらやましいよー」
「そうかな…?そうだ、昨日ね、可愛いヘアゴム買ったんだ!明日つけてくるね!」
「わぁ~楽しみにしてる!じゃあ、また明日ね!」
最近のチカには少し悩みがあった。
ここ最近首の後ろのかゆみがおさまらないのだ。
「ねえお兄ちゃん、首の後ろ蚊にさされたみたい。薬つけてー」
チカの家は両親が忙しく、面倒は5歳年上の兄がみてくれている。
「…チカお前これ虫刺されじゃないぞ…あせもだな…」
「あせも?えーどうしたら治るの?」
「汗をかいたときに髪で蒸れているからだと思う…切ったら治まるんじゃないか?」
!!!!
どうしよう…髪切りたくない…けどかゆいのは、もっといや…
「ほらここ、掻き毟って傷になってる。ひどくなる前に切っとけ。また伸ばせばいい」
「…………うん、わかった」
「本当に俺が切っていいのか?」
「うん、最初はお兄ちゃんに切ってほしい」
「よし。本当に短くするからな。覚悟決めろよ」
そう言うと、鋏を手に取り、チカの耳下に近づけた。
「いいよ。思い切り切っちゃって。」
ジョキ、ジョキ、ジャキ。
パラパラと短い髪が耳たぶにあたると、長い髪は床にパサッと落ちた。
後ろの髪にも首の付け根に鋏を入れ、ジョキジョキジョキ…と横に切り進められる。
バッサバッサと長い髪が離れ、床に落ちていく。
「これで最後だ」
そう言いながら、反対側のサイドも耳下でザックリ切り落とした。
「少し整えるからもう少し待ってろ」
梳き鋏を短くなった髪にシャキシャキ入れると、さらにバサバサと髪が落ちていく。
「襟足も整えるぞ。下向いてろ」
ヴィィーーーン…とうなじと襟足にバリカンを丁寧に入れる。
「はい、どうだ、首元スッキリしただろ?」
兄から手渡された鏡には、すっかり短くなった髪のチカが映っていた。
「うわ、随分短くなってる…後ろも首に全く髪がないよ…スースーするー」
「お兄ちゃん、髪の毛切ってくれてありがと。短いのもなかなかいいかも」
そう言ってチカは長かった髪に別れを告げた。
「ちーちゃんおは…!!!えっ…ちーちゃん!!?」
「えへへ、初めてショートに切っちゃったよ、どうかな?」
「ばっさりいったねー!サラサラヘアー好きだったのにー」
「うぅ…」
「でもすっごい似合ってる!ちーちゃん短くてもサラサラだもん!」
「よかった~。ね、今度一緒にカチューシャ買いに行こう!短い髪に似合うの一緒に探して!」
「任せろ!すっごい可愛いの選んじゃうよ!」
数日後、チカの首のあせもは嘘のように消えた。
「また髪が伸びたらお兄ちゃんに短くしてもらお…!」
「「は~ぁ。ヒマだなぁ~…」」
小学校生活最後の夏休みも終盤にさしかかった頃、
親友のランとサヤカはぐだぐだと毎日を過ごしていた。
「もう8月も終わるってのに暑くて外で遊ぶ気にならないねー」
「えー、でも家の中にいてもヒマだよー?」
「いいじゃん、サヤカの部屋クーラー付いてて涼しいし!」
そう言いながら、ランはサヤカの部屋にあったファッション雑誌をパラパラ読んでいる。
しょうがない、TVでも見るかとサヤカはリモコンを手にした。
「……ねぇサヤカちゃん」
「ん?なぁにランちゃん?」
「サヤカちゃんって、髪の毛ずっと長いの?」
「うん。小さいときからずっと長いよー」
「そうなんだ。あたしもずっと長いんだーえへへっ」
2人ともロングヘアを左右の耳上で結んでいる、仲良くお揃いの髪型だ。
「…ねぇサヤカちゃん。…一緒に髪の毛、切ってみない?」
ランは、いつの間にかサヤカの部屋にある工作用のハサミを手にしている。
「…えっ…?ええええーーーーっ!!?」
「絶対かわいくなるって!サヤカちゃん、ランの髪の毛切ってよ!
ランはサヤカちゃんの髪の毛切るから!」
「どーやって切ろうか…」
「よくわかんないから、とりあえず2つ結びのところ切っちゃおうよ!」
お互いにハサミを持って、対面に座った。
「サヤカちゃん、切るよ…」
「ランちゃんも、切っちゃうからね…」
ゆっくりと、相手のツインテールの結び目にハサミを入れる。
「「せーのっ!」」
ジョキ、ジョキ、ザク、ジョキジョキ。
髪が切られていく感触と切っている感触が同時に伝わった。
ゆっくり相手の髪から手を放すと、お互いの手には相手の髪束が握られていた。
「…切っちゃった…ね…!」
「なんかゾクゾクしたぁ!」
「早くもう片方も切っちゃおうよー」
「じゃあ、いくよ」
ジョキ、ジョキン、ジョキジョキジョキ、チョキン。
「…ランちゃん、髪の毛みじかくなったよ」
「サヤカちゃんだってもう長い髪の毛ないよー」
「でもなんか長さバラバラだねー。どーしよう…」
「あたしお母さん呼んでくる!キレイに切ってもらおう!」
数分後、すっきりとボーイッシュな髪型になった2人がいた。
「ランちゃんさっきより短いよ!男の子みたいになってるよ!」
「ほんとだ!もう髪の毛結べないね!サヤカちゃんも男の子みたいな髪型だよー!」
「あたし、男の子と間違われちゃうのかな、やだなぁ…」
「…!そうだサヤカちゃん!」
ランはおもむろにバッグを漁ると、何かを取り出してサヤカの短くなった髪と自分の髪をいじった。
「リボンのパッチンどめ!お揃いだよっ!」
「…えへへっ、ランちゃんありがと。かわいいよ。すっごい似合ってる!」
「ありがと。サヤカちゃんもお姫様みたいだよ!」
そう言い合って、2人は仲良く笑いあった。
「はぁ~あ。今月これしか残ってないよー」
銀行の残高とにらめっこをしているのは、中小企業に勤めるレナ。
「もうすぐ誕生日だし、自分にイイもの買おうと思ってたのにー・・・」
PCを立ち上げ、日払いでできるようなバイトを探した。
「んーキャバクラはレベル高いなー・・・短時間で休日にサッとできるようなのは・・・」
ふと、レナの目にある文字が入った。
――カットモデル、募集中!謝礼あります。詳しくはメールで――
カットモデル、確か先輩が話していた、美容師の練習台だったり、ヘアカタログのモデルだったりするやつか。
オシャレが楽しめる上にお金までもらえる、こんなオイシイ話はない。
早速レナはメールを送り、打ち合わせの日程まで取り付けた。
「こんにちは。君がレナちゃんだね?」
カフェで打ち合わせの相手を待っていると、20代後半ほどの若い男が顔を出した。
「初めまして。あなたが美容師さんですか?」
「僕は違うよ。アシスタント、ってところかな?橋田です。今回はよろしくね。
いきなり本題に入るけど、レナちゃんどのくらいまで大丈夫?」
「え・・・?どのくらいって髪を切る長さですか?」
「そうそう。レナちゃん綺麗なロングヘアだから、確認しておこうと思って」
「う~ん、あまり短く切りたくないかな?」
レナは肩より上には一度も切ったことがなく、小さい頃からロングヘアをキープしていた。
「でもね、インパクトがあるほど売れるから、その分謝礼も上がりやすいんだよ。どうかな?」
「・・・!!!」
少しの沈黙の末、レナは決断した。
「短くします!ばっさり切っちゃってください。」
「本当に!?ありがとう!では当日は○○駅集合で!よろしくね!」
(橋田さん、いい人そうで良かった。それに美容師さんだもの、普通に可愛い髪形にしてくれるはずだし、
髪だってすぐに伸びるよね!楽しみだなっ!)
当日、待ち合わせ場所に行くと橋田は既に待っていた。
「レナちゃん、こっちこっち!じゃあ今から現場に向かうよ。心の準備はいい?」
「もうバッチリです!早く行きましょう!」
橋田の案内で、数分歩いた。
「到着~。ここだよ。店に入るところから早速撮影に入るから~」
案内された先は、街のハズレにあるような普通の、床屋だった。
「え・・・えっえええ???」
レナがパニックになっていると、既にカメラが回された。
「レナちゃん、カメラが回っているから君はもうモデルさんなんだ。しっかり頼むよ!」
恐る恐る床屋のドアを開けると、沢山のスタッフやカメラが用意されていた。
「いらっしゃい。こちらへどうぞ」
床屋のオバちゃんがレナに声をかける。
「今日はどのようにします?」
「あ・・・あの、み、短くして・・・」
そう伝えると「それじゃ、ばっさり切っていきますね」と言って、レナの髪にハサミが入る。
ジャキ、ジャキ・・・カシャ、パシャ・・・
ハサミの音とカメラの音がレナの耳に入ってくる。
(後ろ、相当短く切られてるみたい・・・)
襟足にハサミの冷たい感触があり、バサッと髪の落ちる音と共に、急に首が涼しくなるのを感じた。
サイドの髪にもハサミが入る。
(えっ、そこ耳の上・・・そんなに短く・・・)
ジャキジャキジャキ・・・
あっという間に背中まであったレナの髪は短くなってしまった。
オバちゃんはスキばさみに持ち替えると、根元からザクザクとレナの髪をすいていった。
(まだこんなに切るの・・・どうしよう・・・)
一通り切り終わると、手でワシャワシャと髪を払われ、下を向かされた。
ウイーーーーン・・・ジリジリザリザリ・・・
(バリカン・・・!えっ私もしや坊主に?)
不安なままシャンプーをされ、剃刀で襟足を剃られた。
「お疲れ様。こんな感じだよ」
鏡に映ったのは、少し長めのツンツンヘアをしたレナだった。
「スッキリしましたね」
「・・・あ、ありがとう、ございます・・・」
そう言って、レナは椅子から立ち上がり、店を出た。
椅子の周りにはレナの長い髪がドッサリと落ちていた。
「・・・カット!レナちゃんお疲れ!良かったよー!可愛くなったね!」
すかさず橋田が駆け寄ってきた。
「謝礼は今度振り込んでおくから!またよろしくね!」
・・・そう。レナはフェチビデオのカットモデルに申し込んでいたのだった。
数日後、レナのもとに先日撮影したDVDが届いた。
(・・・恥ずかしい!こんなのが世に出回っているなんて!)
捨てようとしたが、やはり記念として取っておくことにした。
そのDVDは売れ行きもよく、意外と多くの謝礼が支払われた。
橋田ともその後連絡を取り続け仲良くなり、今度デートに誘われてしまった。
(素敵な誕生日になりそう・・・髪、切ってよかった!)
更新は不定期です。
つまらないかもしれませんが、よろしくおねがいします。